統合失調症とは?
統合失調症は幻覚、妄想など現実と非現実の境がぼやけてくる症状が特徴的な心の病気です。
10代後半から30代前半までに発症することが多く、男女比はほぼ同じ。発症率は人口の1%弱です。
統合失調症は幻覚、妄想など現実と非現実の境がぼやけてくる症状が特徴的な心の病気です。
10代後半から30代前半までに発症することが多く、男女比はほぼ同じ。発症率は人口の1%弱です。
統合失調症が発症するメカニズムは厳密には解明されていませんが、統合失調症になりやすい性質を持った人が、何らかのストレスをきっかけに発症に至ると考えられています。統合失調症になる前の症状として、成績の急低下、部屋に閉じこもるようになる、夜眠れない、口数が少なくなる、身なりに構わなくなるなど、何らかの異変が見られる事があります。
■陽性症状統合失調症発症後の急性期には、現実と非現実の境は顕著にぼやけ、幻覚、妄想、幻聴が出現し、思考の一貫性は低下し、話の内容にまとまりが欠けてくるなど、多彩な症状が出現し、現実への適応能力は低下してしまいます。
陰性症状統合失調症のもう一つの症状として、感情の起伏に乏しい、意欲低下、興味減退などがあります。こうした症状は、私たちが活動する際に不可欠な、自発性、感情、意欲、興味などの機能低下の症状であり、陰性症状と呼ばれています。陰性症状は陽性症状と比較すると、目立ちにくいですが、急性期を過ぎ、社会的機能を回復していく上で、問題になりやすい症状です。孤独な環境に陥りやすいなどの環境的要因も陰性症状の悪化に関与しているので、周囲からの理解、サポートは回復への過程で大変、重要な要素です。
遺伝だけではなく、脳内の神経伝達物質の一つであるドーパミンの異常が関与していると言われています。
統合失調症の妄想の治療にはこのドーパミンの働きを抑える抗精神病薬が用いられ、妄想のコントロールによく効きます。また、躁うつ病のそう状態で気分が高揚した時には誇大妄想が、反対にうつになり気分が落ち込むと心気妄想、貧困妄想、罪業妄想が出現することがあります。特に、うつ時にみられるこれらの妄想は自分を自殺にまで追い込んでしまう危険があります。妄想があるという事は心の調子がかなり悪くなっているサインですので、精神科を早めに受診するようにしましょう。
例に挙げた幻聴によって自分自身がコントロールされてしまう危険もあります。幻聴が聞こえたら、すぐに治療を受けることが望ましいです。実際、薬物療法は幻聴に対してよく効きます。
摂食障害とは、神経性食欲不振症(拒食症)と神経性大食症(過食症)をまとめた呼び方です。
表面上はまったく反対の食行動異常ですが、両者は基本的には同じ病態で、ある時期には拒食の状態であったものがその後、過食の状態へと移行する場合が多くみられます。ここでは特に神経性食欲不振症(拒食症)について取り上げます。
神経性食欲不振症は、典型的には若い女性がやせようとしてダイエットして食べなくなり、その結果著しい体重減少をきたし、無月経など様々な症状を伴うものです。
人それぞれ、いろいろな原因があるでしょう。家庭、学校、職場、友人などの人間関係での悩みや自己実現、独立と依存の葛藤などの発達上の課題に対すると不安から発症するケースが多いようです。
根本的には、成熟拒否、肥満恐怖、そして幼児期への退行願望があるようですが、このような気持ちを適切に対処することができないために、もっぱら摂食してやせることで対処していると考えられています。
摂食障害の治療は、心理療法あるいは認知行動療法(認知療法)が中心です。薬物療法は不安を和らげたり、補助的に使用します。
摂食障害になる方の特徴は、小さい時からまったく手のかからない「よい子」として育ち、成績も優秀で「がんばり屋」ですが、反面なんでも完璧にやらないと気がすまないという強迫的傾向があります。小児期は何とか適応していますが、思春期になって自我が成長するとともに混乱し、食事を拒み、やせることで達成感を得る癖がついています。ですから、家族全体が協力し、子ども時代には十分に子どもらしい生活が送れるように配慮することが大切です。摂食障害を治すのは時間が掛かりますので、出来るだけ早く、心理療法あるいは認知行動療法(認知療法)を始めるのが望ましいでしょう。
拒食症とは、痩せ願望や肥満への恐怖から、食事を拒否し、際限なく痩せていく心の病気です。神経性食欲不振症とも呼ばれます。主に10代から20代くらいの若い女性に多くみられます。米国精神医学界の要件では、
などを満たす場合を拒食症と診断しています。
偏ったダイエットで栄養不良が続くと、いろいろな障害を起こします。中でも筋肉を 動かすのに必要な栄養素「カリウム」が不足すると、疲労を感じやすくなり、手足の脱力感などの症状を起こします。心筋細胞までもが低下し、不整脈を起こし、重症の場合は心不全を起こして突然死に至ることもあります。他には、頭髪の脱毛や脈拍が遅くなったり(除脈)、低体温、低血圧、貧血、無月経などが多く見られる症状です。無月経症はストレスの蓄積や低栄養状態の持続により、視床下部や下垂体が悪影響を受け、性腺刺激ホルモンのバランスを崩し月経周期が乱れることで起こります。
自分をコントロールするための機能が壊れてしまっているために、過度なダイエットで食事制限をしてしまうのでしょう。拒食症の正式病名は 「思春期痩せ症」、「神経性食欲不振症」、「神経性無食欲症」と呼ばれています。思春期などによく起こる病的な痩せ願望は心に原因があり、食欲がなくなったり食べる事を拒否したりする状態です。拒食症を起こす原因になる心の病はとても複雑で、根の深いものであることが多いため、拒食症の性質はまだはっきりと把握されていないのが現状です。それから、拒食症の人は過度な痩せ願望や肥満恐怖を持っています。それは体重、体のバランスのみでなく、体の部分的な太さについてもそれをひどく気に病み、痩せたいと願っているようです。拒食症の人の痩せ、肥満の基準は常人とは異なり、ダイエットはエスカレートする一方で、自分の体型に対して正しいイメージが持てないのも大きな原因です。この誤った理想の体型は単純な思い込みではなく、認知の歪みなど、心の問題から生じていると考えられています。だから周囲が説得しても聞き入れられないのです。
治療は症状のタイプに合わせて行われ、食事を極限まで制限している場合には、まず飢餓状態の改善が行われます。またドカ食いと食事の拒絶を繰り返す場合には、下剤や利尿剤を用いている例が多いので、体の電解質バランスの改善が先決です。
心理カウンセラーや医師との面談を繰り返し、誤ったボディイメージや思い込みを矯正していきましょう。これには認知行動療法(認知療法)などが有効です。
場合によっては親子関係の修復と、当人をサポート出来るようにご家族の協力も必要になります。
拒食症で悩んでいる人の多くは、食べることを抑制する反面、食物に非常に強い関心を持っているようです。食物を大量に買い込んでいたりしていないか注意してください。摂食障害をかかえる人の中には、食べたものを体に吸収させないように下剤を使ったり、食べた後に自分で吐いてしまうこともあります。下剤の乱用は体の電解質のバランスを崩す恐れもあるので、十分な注意が必要です。いずれにしても、栄養不良が長引くのは大変に危険です。標準体重の6割を切るほどの痩せは死につながることもあり、家族が「拒食症かも?」と気付いた場には、心療内科や精神科への受診を促してあげてください。
食べ過ぎ、いわゆる過食の原因は、ほとんどがストレスです。ヤケ食い(最近は「ドカ食い」とも言うようです)という言葉があるように、摂食による刺激は脳に快感をあたえ、一時的にストレスを解消して、開放感をあたえます。
ストレス発散のために、たまには好きなものを好きなだけ食べるということもいいでしょうが、それが日常的なら、ちょっと問題です。自分で感情をコントロールできなくなり、精神的なストレスを抱えたまま過食症や肥満など、いろいろな問題につながります。そのうちに、食べることでしか精神のバランスを保てない状態になってしまう危険性もあります。過食をやめるには、まず自分の心と向き合い、その根本原因を解決することが必要なのです。自分で解決できないときは、専門医の力を借りましょう。
発作的に食べ物を口にしたくなって、とりつかれたように食べ物を胃に流し込み、落ち着いたら、今度はトイレで吐いてしまう。もし、このような状態なら、過食症の可能性があります。イライラしたり、不安になったり、あるいは孤独に絶えられず、過食によってそうした気持ちを埋め合わせようとしてしまうのです。過食症は、拒食症よりも陥りやすい摂食障害で、特に若い女性に多い症状です。ひどくなると、うつ状態から抜けられなくなり、生きる気力をなくす人もいます。また、過食したあとに吐くために、胃酸で歯が溶けたり、食道炎をおこしたり、けん怠感などさまざまな問題がおこります。ひどくならないうちに心療内科や精神科で相談をしてみてください。
女性の場合、月経前に過食気味になることがあります。これはPMS(月経前症候群)による症状のひとつで、生理の1~2週間前から不安感、イライラ、頭痛、過度の食欲、むくみなど、人によってさまざまな症状があらわれます。女性の約7割が、生理前にこのような症状を経験していて、なかには日常生活に支障がでるほどの症状に悩まされることも少なくありません。それから最近多いのは、ストレス解消の「ドカ食い」です。
外部から同じ刺激を受けても、人によって影響はさまざまです。ストレスによって過食になる人の多くは、目の前にある問題と真剣に向き合うことをさける傾向にあります。取り組む前から乗り越えられないと思いこんでいることが原因かもしれませんが、過食が一時的な回避策であることは、自分自身、心のどこかで理解しているはずです。そして、そんな自分への嫌悪感から、苦しんでいることでしょう。過食によって胃腸障害や肥満を引き起こすことで、いっそう、罪悪感は深まります。ストレスをいかに乗り越えるか、真剣に取り組まない限り、この苦しみから開放されることはありません。当院では心理カウンセラーや医師との面談を受け、自分なりのストレス解消やリラックスできる方法を見つけることをすすめています。
月経前の過食を改善するには、日頃から運動をして、血液の循環をよくすること。酸素をいっぱいとり込むウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。また、過度の食欲をおさえるといっても、あまり控えすぎると、かえって症状を悪化させかねません。食べ過ぎはさけながらも、ビタミンやミネラルの豊富な食事を心がけましょう。それから、何が異常食欲の原因になっているのか分からない場合、しばらく食事日記をつけてみましょう。どんなときに食欲が出てきたのか、どんなときについお菓子に手が伸びてしまうのか、食べ終わったときどんな気分なのか、体調はどうなのかなどなど。感じたままに日記をつけて自分の行動を省みるのもひとつの手です。あとから振り返って意外な原因がみつかるかもしれません。日記、または、メモ程度でも十分です。まず、思いのままに書いてみましょう。気になる症状については、一人で判断をせずに心療内科や精神科など専門の医師の意見を聞いてみるのもよいでしょう。
突然、気分が悪くなり、胸がドキドキして、呼吸が苦しくなり、全身が緊張して冷汗をかき、気が遠くなり、心臓の病気か何かで、このまま死んでしまうかもしれないと思うほどの強い不安に襲われることです。また、このような動悸を伴う強い不安の発作が、繰り返して起こります。「また発作が起きるのでは…」という不安が常にあるため、誰かと一緒でなければ外出もできないほどになり、学校や会社を長期間、休むこともあるようです。パニック発作の再発に強い不安を抱くようになったり(予期不安)、パニック発作を恐れて1人で外出できなくなったりします。パニック障害という病気が、日本ではあまり知られていないため、多くの人が自分に起きている症状がパニック障害と気付いていなかったり、医療機関で検査を受けても異常がないといわれて適切な治療を受けないまま徐々に症状を悪化した患者さんが多いようです。日本では、パニック障害は、100人に3人の割合で発症していると考えられています。パニック障害は治療を受けないで放っておくと慢性化する場合がありますから、早めに治療を受けるのがいいでしょう。
パニック障害の発症に脳内神経伝達物質“セロトニン”や“ノルアドレナリン”のバランスの乱れが関係することが分かっています。そして、このセロトニン系に選択的に作用するSSRIという種類の薬がパニック障害に非常に有効であることが証明されています。
パニック障害の治療は薬物療法です。当院では副作用の比較的少ないSSRIを使用しています。
次の症状がある方はあらかじめ医療機関で検査を受けることをお勧めします。
普段の生活では規則正しい生活(早寝・早起き)を心掛けましょう。ストレスをためすぎないようにしましょうカフェインなど(コーヒー、紅茶、緑茶など)刺激物は不安発作を引き起こしやすくするので、過剰な摂取は控えましょう。
強迫性障害(強迫神経症)とは、簡単にいうと「分かってはいるけれど、どうしても止められない症候群」です。自分でも不合理だと思いながら何回も繰り返すので、本人にとっては大変つらい病気です。
強迫性障害の症状として、よくみられるものは、トイレに入った後何回も手を洗う、ドアのカギをかけたかどうか、ガス栓や家の戸締りをしめたかどうか何回も確認したりしてしまう、などがあります。本来これらの行為は安全を確保するために誰でも行いますが、それが何回も何十回も確認しないと気がすまない状態になると社会的に支障をきたすことになり、何らかの治療が必要となります。
気持ち的に余裕がなくなると、本来外界からの脅威に対して身の安全を守るための行動回数が、コントロールできなくて過度に繰り返すようになっています。
強迫性障害の治療は、薬物療法と認知行動療法(認知療法)です。
強迫行為や確認行為は、本来外界からの脅威に対して身の安全を確保するための行動です。あるいは、不安・恐怖という不快な情緒を安定させるための行動によるコントロール法です。これが適切に行われれば何の問題も起こらないのです。
日頃から心理・社会的ストレスをためないこと、自分なりにリラックスできる手段を身に付けて不安やストレスのレベルを下げる手段を見つけましょう。余裕のある生活を送って精神的にゆとりをもつこと、それから、重要なのは心配事を相談できる相手を探しましょう。家族や信頼できる友人、カウンセラーや医師などを見つけましょう。誰かに悩みや心配を打ち明けて、心にゆとりのスペースを増やすのがよいでしょう。
不安神経症の症状には、精神的症状と身体症状があります。主な精神症状は、不安、過敏、焦燥、緊張、混乱、抑うつなどがあります。主な身体症状は、動悸、脈拍数が異常に多い(頻脈)、胸部不快感、胸痛、息切れ、呼吸困難、めまい、ふらつき、下痢、腹痛、不眠、しびれ感などさまざまな自律神経症状があります。その他に、ある状況や空間を怖がる、社会適応が上手くいかない、アルコールや薬物に依存しがちになることがあります。不安神経症は、急性の不安発作(パニック発作)を繰り返すパニック障害と、慢性的に不安感と同時に様々な身体症状を訴える全般性不安障害の二つに分けられています。全般性不安障害とは、過剰な不安と心配が6ヶ月以上にわたって続くこと、それを自分でコントロールが難しいと感じていること、それから、次の症状のうち3つ以上当てはまる場合は医師に相談した方がよいでしょう。
落ち着きがない、過度な緊張感、過敏
疲れやすい
集中できない
易刺激性
筋肉の緊張が続く
睡眠に障害がでる
言葉で表現するのが難しい
他人に分かってもらえない
長期間続く
不安や緊張がいったん消えてもまた再現する
不安・恐怖は、本来外敵の危険を察知して身の安全を守るための警報システムですが、これが過敏に反応しすぎたり、自分でコントロールできなくなった時には、いろいろな障害が生じ日常生活を送る上で支障をきたすようになります。
不安神経症の治療は、薬物療法と精神療法が基本です。薬物療法としては、一般的にベンゾジアゼピン系抗不安薬を使用します。 大抵の場合はある期間抗不安薬を服用すると精神症状も身体症状も改善します。しかし、心理的葛藤やストレスを抱えている場合、性格的にもともと神経質でちょっとしたことに過敏に反応しやすい人は、精神療法を受けるのがいいでしょう。当院の患者さんには心理カウンセリングや認知療法を勧めています。また、自分に合うリラックスできる方法を身につけて、セルフコントロールに心がけることも大切です。
不安神経症でお悩みの方・ご家族の方へ
日頃から残業しすぎない、生活のリズムを整える、運動や休養を十分にとるなどストレスをためないとこが大切です。そして、一人で考えるすぎることはよくないので、家庭や職場で気軽に話したり、相談したりできるような雰囲気を作るように心掛けましょう。
対人恐怖症には色々な症状がありますが、いずれの症状も、人から変に思われるのではないかという人間関係(対人関係)の不安が根底にあるようです。
人見知りをするとか、人に気を使うということは、誰にでも多かれ少なかれあるものですが、これが過度に強くなり、ストレスになっているのが対人恐怖症でしょう。
また、対人恐怖症の症状に悩んでいる人は、何とかして対人関係を良くしたいと努力し、性格改善や心理学関係の本を読んだりしている方が多いようです。また、民間療法を試みたり、宗教的な修行にのめり込んでしまったりもするように見受けられます。
対人恐怖症は、神経症のもっとも代表的な症状になり、人前でのあがりや緊張、手や足の震えなどが、主な症状になります。その他には、
などがあります。
対人恐怖症の症状に悩んでいる時は、緊張や不安を感じて当然の時でも、これを異常なものとか、恥ずかしいことと考え、否定したり、排除したり、していることが多いものです。そして、このために、ますます緊張や不安、症状を強くしてしまうという「悪循環」に陥ってしまいます。
緊張や不安を感じてもおかしくないのだ、自分を受け入れるようにしていくことから始まります。そのためには、森田療法が最も有効でしょう。
「あるがまま」に目的本位や行動本位に生活していくと、緊張や不安を必要以上に大きくしなくて済み、また、少しずつ対人恐怖症の症状が和らいでくるものです。
対人恐怖症は脳や体の病気ではなく、緊張や不安といった感情を、意志の力で変えることが出来るという「誤った認識」を持ち、これに引きずられて行動していることが原因になっているのです。
ですから、薬や暗示、宗教、民間療法や厳しい訓練や練習など、対人恐怖症の症状だけに目を向け、これを取り除こうとしても、一時的には治りますが、少し経つと、また症状が再発するというように、根本的な治療にはなりません。
しかし、森田療法の学習を通して、根本原因である「誤った認識」が正されてくると、対人恐怖症の症状を根本的に克服することができるものなのです。また、心理カウンセラーとの面談をとおして認知の歪みを取り除くのもよいでしょう。
「誤った認識」を取り除くことを目標にしましょう。安直に民間療法などに手を出すのは返って遠回りです。「急がば回れ」近道して危ない目にあうより、「森田療法」や「認知行動療法」を受けるほうが、安全、着実、それに治りが早いようです。
社会恐怖とはあまり聞き慣れない言葉ですが、対人恐怖、あがり症、赤面恐怖、視線恐怖などを含んでいます。このような悩みがある人は意外と多く、人口の約8%と考えられています。家族や親しい人とは平気で話ができますが、職場や学校でのプレゼンテーション、会議や授業の発言、多くの人と食事をしたりする時に、極度の緊張や不安を感じ、そういう場面を回避するようになります。ベースにあるのは、恥をかいたらどうしよう、失敗したらどうしよう、自分が受け入れてもらえなかったらどうしようといった過度な不安や緊張のために、動悸、発汗、ふるえ、顔面紅潮(赤面)などの身体症状が現れることになります。
社会恐怖は青年期に発現することが多く、少人数の人々から注視されることに対する恐怖感を主とする症候群です。主には次のような特徴があります。
一般的に上記のような症状が、長期間(6ヶ月以上)続く場合は、社会不安障害(社交不安障害)を疑った方がよいでしょう。
その他にも、
人前で恥をかいたらどうしよう、失敗したらどうしよう、自分が受け入れてもらえなかったらどうしようといった過度な不安や緊張が強いためです。
社会恐怖の治療は薬物療法と認知行動療法(認知療法)が有効でしょう。薬物療法としては、抗不安薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第一選択の薬です。一般的な治療は、認知行動療法(認知療法)と薬物療法(SSRI)を併せて行うことです。
認知行動療法(認知療法)とは、ストレスのもととなる出来事から引き起こる不健全・非合理的な思い込みに対して、自分自身を見つめ直し、建設的・肯定的・現実的な考え方に転換させていく、今、注目されている精神療法です。ものの考え方を少し変えるだけで、ストレスは減るものです。決め付け、全否定、深読みなど特有の思考パターンに陥りがちな人は、悩みがたまるばかり。この傾向を改善するには「事実は仕方がない」でも「事実に対する受け止め方を変えれば悩みは軽減される」と自分の考え方のクセを変えることを目標にしています。
社会恐怖になる人は、幼少時から人見知りが強いこと、集団の中に入りにくいこと、人との接し方がうまく習得できないことなどの素因・性格的要因がベースにあって、何か人前で恥をかいた、失敗したという外傷体験が予期憂慮および回避行動を強くすると考えられます。こうしたことは誰しも経験することですが、社交性を身に着けることで徐々に解消していくものです。人前で不安・緊張が高まり、時にはドキドキしたり汗をかいたりするのは当然の反応ですので、それを恥ずかしい、異常と考えないことが大切です。
引きこもってくよくよ考えるとますます恐怖感は強くなりますから、思いきって外に出てみるのもよいでしょう。また、人に相談にのってもらうことや話し方・人との接し方などの社会的スキルを高めることも自信の裏づけになります。
ただ、社会人になってから、社会不安障害の症状を一人で克服するのは難しいでしょうから、医師や心理カウンセラーなどのアドバイスを受けながら、認知行動療法(認知療法)で考え方のクセを修正していくのがよいでしょう。